樹杜屋は裏山に林道を作っています。おもいは裏山のフル活用。林内作業に有用な作業路が、それがさらに高い密度で作ってあれば、必要な種類の木を必要なときに選び取って収穫できる。仕事でも楽しみでも、フィールドへ出るのに要する時間も気持ちの面も、道がついて山がとても近くになりました。
今回の内容は林道づくりをしている樹杜屋代表の荒木から聞き取った、ある日の作業の様子のレポートです。
林道の作設
掘るとわかる山
表面からはわからないさまざまな山の機微が、土を掘れば推測できます。その山の地面の成り立ち、現在の状況を感じ取ることができるのです。場所によって土の中の雰囲気が違います。尾根の形、谷の形、植生、採掘で出る土や礫、微妙な変化を感じながら、その場に最適な林道を計画、作設するのです。
例えば今日の作業箇所は、山の入り口になる場所で比較的平らな部分です。少し上で急斜面になり、この場所は腐葉土が落ちてきてたまる場所です。地上から150cm近くが通常の表土の様子に加えてまるで畑の土のような様子です。林道の表面を仕上げるために掘り上げたい芯土と呼ばれる層がとても深い。
小さな重機で作る道
上の写真は床(トコ)と呼ばれるちいさな平地を作る作業途中のものです。(林道づくりには様々な手法があるのですが、今回は割愛。本来は5tユンボで取り組むべき作業ですが、所有ユンボが3tのため少し手間をかけて作業しています。)3tユンボのアームが届く距離の限界を超えていて、土壌の天地返しが大変手間です。地面を2段に切って1層目2層目と積み上げて、表面の仕上げには芯土を敷き固めます。手間ですが今はそれでやっています。3tユンボの作業には慣れましたが、作業に応じて適切なサイズの重機を使うことの大切さをしみじみと感じています。いずれ5tユンボが欲しいところですが、今年の優先順位はそこではないので今日は我慢です。
安全な林道を作る
今日、作業道の口を完成させました。以降は夏を越えて涼しくなったころに向かおうと考えています。距離と高さで測った縦断の勾配(林道の勾配)は12%でした。林道の勾配の目標はゆるければ緩いほど良いと考えています。
急勾配の林道は作業中の安全性に問題があり、林道走行中の危険度も高いため、樹杜屋の山は10~15%、最大でも20%までにとどめて林道を作っています。この値は他の林業従事者の方々には過剰な安全目標だと受け取られるかもしれません。ただ自分は急な坂が原因になった林業事故で知人を亡くしており、過剰かと思うかもしれませんが、確保できる安全はある程度優先したいと考えています。
勾配がゆるければ目標の標高へ到達するまでに距離を移動しなければならないというデメリットがあり、安全性と効率を天秤にかけて作業しています。経験の、ケースバイケースの中での最適解を判断できるようになりたいと思います。
裏山のフル活用
所有の杉林に林道を作設するにあたって、計画進路上に差し障る杉の木を数本伐り、作り立ての林道を使って出材しました。建築材料として使いやすいまっすぐな部分は所有する簡易製材機で構造材や板に仕立てます。のこりの根元や先端の部分は薪になります。製材した木端(コワ)の部分も薪になります。樹杜屋の山の木はこうして“歩留まり100%”になるのです。
以下のリンクから、製材木端を薪に試し焚きをした薪ストーブの設置レポートを読むことができます。