「所有している建物に薪ストーブを導入したい」という依頼が樹杜屋ストーブのお仕事の8割です。すでに完成している建物、そして暮らしの動線の中に薪ストーブを新しく設置することはオーナー様にとっても、施工店にとっても難しいチャレンジになることが多いです。
この記事ではいままでお客様と樹杜屋が直面した障害のうち、事例が多かったものから3つを紹介します。
部屋の大きさ
薪ストーブを入れるのならばある程度よゆうのある間取りが必要です。必ずしも壁を抜くなどの大規模リノベーションをすることはありませんが、家具のレイアウトを変更するなどの工夫が必要な場合が多いです。(いままで壁を抜いたオーナーさんはいらっしゃいませんが、もしも壁を抜くということになれば、樹杜屋大工部門がご相談受けます。)
面積
薪ストーブはほかの暖房器具と比べ物にならないくらい大きな熱量を放出します。ですのである程度大きな部屋に設置することをおすすめしています。現代風の細かく壁で仕切られたお部屋では冬の快適な温度帯を超えて暑くなってしまうケースもあります。PANADERO社によるとISLA(イスラ)は標準的な天井高の8畳間8つ分相当の空間を暖められる能力があるそうです。
奥行き
ISLAはとくに前方への熱輻射が強い設計になっています。ショールームでISLAの燃焼をご覧になった方にはわかっていただけると思いますが、ISLAの燃焼には熱の圧力ともいうべき力強さがあります。体験のお客様はもれなくじわじわと椅子を後方へずらしていくことになります。ISLAの正面にもしソファーをしつらえるなら、2mくらい離すと快適なのではないかと思います。
ということを踏まえますと、お部屋の奥行きは4m以上必要になります。長四角のお部屋ですと、奥行きが長くとれる方向での設置をおすすめしています。一方で和風住宅の仕切りがふすまの間取りでしたら、あまり難しく考えることはありません。
動線
動線の問題は2種類あります。移動の邪魔にならないかという受け身な問題と、道具として使いやすいかという積極的な問題です。
動線を妨げない
ISLAはリビングにある家具(ひとり掛けソファーやローチェスト、大型テレビ)程度のサイズですが、放熱しますので、生活動線に気を付けて設置場所を検討します。
使いやすい動線
薪の搬入経路。都合のいい出入口はあるかどうか。室内に2日分くらいの薪が置けるでしょうスペースはあるか。
もし薪ストーブの天板を調理の補助熱源として使いたいのならば、台所に近いほうがいいかもしれません。
煙突の経路
後述の「問題にならなかったこと」に入れようか迷いました。たしかに薪ストーブ設置予定の真上が使用頻度の高い部屋だったり、煙突施工に課題のある建物もありました。最終的には煙突の経路を確保でき、薪ストーブの燃焼性能を最大に発揮できる煙突施工になりました。まずはご相談ください。
建物の柱梁、電気配線
薪ストーブの煙突施工には、建物の壁、壁の中の情報が不可欠です。壁や天井に煙突を通すことになるので、慎重な煙突設計の計画をしています。特に柱や梁などの建物の構造を支える部材の位置と、電気配線の位置が大きく関係します。一般的な住宅建築には共通仕様があるので、樹杜屋大工部門によってある程度の推測は可能です。
とは言っても一番確実なのはオーナー様に建物情報を提供していただくことです。建物を建てた工務店からの情報、設計の詳細図面、建築途中の写真のいずれかでもあれば提供をおねがいしています。専門性の高い問題です、まずはご相談ください。
番外:意外に問題にならないこと
炉台炉壁にかかわる内装工事
オーナー様の好み次第ですが、レンガを積んだりタイルを貼ったりという炉台炉壁工事は必須というわけではありません。PANADERO社製品のデザインは木、鉄、ガラスなどと相性がよく、樹杜屋ストーブでは鉄製の置き型遮熱板と、平炉台を標準的な仕様として提案しています。
鉄製の遮熱板と炉台のメリットは、重量が軽い点、搬入設置が短時間で完了する点、価格が手ごろな点にあります。鉄のすっきりした意匠もご好評いただいています。
床の強度
意外に問題にならないのは床の強度です。鋼板製のISLAの重量は150kg成人男性二人分ほどの重量。オーナー様におすすめしている鉄製の炉台と遮熱板をセットにしても220~250kg程度。炉台の鉄板によって荷重が分散されることもあり、ISLA設置の際床の強度が問題になって補強を入れた物件は、本日付でゼロ件です。
樹杜屋には大工工務店のスキルがあり、建物の間取りや屋根形状、ご希望を踏まえて導入機種のサイズ、設置個所や煙突設計などのプランを提案しています。
最後に
薪ストーブ設置を検討する理想的な時期は、住宅を新築する計画段階です。とはいえ、生活様式の変化や住宅の継承、中古物件購入など、すでにある建物に薪ストーブを入れるという時期が来るのもよくある話です。
施工店・オーナー様双方にチャレンジングな状況になることもありますが、実績のある施工店ならば何らかの解決策を持っているものだと思うので、まずはご相談ください。