放置林が問題、人工林が問題、環境保全を最優先しなきゃとか!山が荒れているから災害も多く空気も汚い!などと何となく問題提起する言葉が聞こえてきますが具体的に聞けばその多くがあまりにも現場からかけ離れている内容だという事は少なくありません。山の環境は大切にしなきゃいけませんが自分は言葉を発する前に自分の手を動かして何が出来るのか何をしなければいけないのかを場所に応じて臨機応変に考えています。
適時作業ができるフィールド整備
今年の春は少し作業道を延長。熊剥ぎによって枯れかかっている木を枯れる前に収穫。立木の密度管理による伐採収穫。山自体の成長量に合わせて管理をしています。何よりも作業道が出来た事がおおきいです。
所有林は植樹後40年以上経過し、いつ収穫しても使い物になるような直径の杉がたくさん育っています。必要な木、傷んだ木を適宜収穫し、収穫してできた空間は残った木が枝葉を延ばし太る。太った木をまた収穫し…といった具合に、今後は使う分だけ収穫する時期がやってきます。そのためには作業車両が、作業者が自在に動ける網の目のような作業道が必要になるというわけです。
収穫した木の適材適所
「歩留まり」精肉でも製材でも言われることです。いかに原材料を無駄なく使うか。100%に近いほうが廃棄が少なく、エコロジーでエコノミーです。歩留まりということが大きな声で語られるのは、100%にするのはとても難しいからです。必ず廃棄は出るものです。ところが樹杜屋の山の木は歩留まり100%。収穫した木は適材適所、大工の知見を活かして振り分けていきます。
山から収穫した木、もちろん木材市場へ出荷してもよいのですが、大工が木を伐り出せばどうなるのか。大工には従来の木材市場の「通直かどうか」「材木直径は28cmがちょうどで、太いと値崩れする(木こりさん談)」という価値観に縛られない目があります。「美しく曲がった木を梁に使う」「太い木は板を挽くのに効率が良い」。建材に使える部分を大工の知見で最大限に利用し、建材として価値の低いいわゆるトンボ先端、製材コワの部分は熱エネルギーとして活かし歩留まり100%としています。
大工の製材
先日は少し、3㎥ほど製材しました。樹杜屋はwoodmizerという簡易製材機を所有しています。構造材も挽きますし、樹杜屋が多用する無垢の下地板、裏板を量産するのに重宝しています。
昨年導入したlathe mizerというオプションパーツが有用で、処理能力がうんと上がり、副産物のコワの処理の方が手間がかかりそうです。この副産物もよい燃料になります。侮れません。将来はこの副産物を熱源にした木材の低温乾燥室を作りたいなーと夢想しています。
大工が向き合う山
20代のころから所有林をどうにかしたいという思いを抱えて、各地の山を見に行ったり、自力で伐採や搬出をしたり試行錯誤の中にいます。そして今、高密度路網、小型重機による個人林家の施業を飛騨宮川の山に適した形で進めています。
木材の生産としての山、環境保全としての山、今流行りの持続可能かどうかなど複雑に絡み合う条件の中、全てを満たしたいと奮闘しています。
まぁぼちぼちですが、一年で出来る仕事量が限られているのでウズウズしていると知らない間に人生終わってそうです笑。弟子の頃、40前後くらいの歳の人があと20年毎日体を動かしても出来ん事があるで早めに取り掛かったほうが良いとよく言われていたのですが、自分がその年頃になった今だとよく理解できます。