薪ストーブとは手間のかかるものである。広葉樹の薪をやわい、床の傷に気をつけながら薪や用具を取り回し、コツのいる焚き付けをマスターし、運用で生じる塵やホコリを都度都度掃除し、年に一度は煙突を掃除する。数年に一度はオーバーホールのメンテナンス。これがかつての薪ストーブライフ、マニアが楽しむための趣味のひとつが薪ストーブだった時代の話だ。
時代は移って現在は実用的な暖房器具、生活に必要な熱源として薪ストーブを求める人たちの声が生まれ、それにこたえる薪ストーブが日本でも流行を見せている。焚き付けは簡単、針葉樹が燃費良く燃え、メンテナンス費用も最小に抑える薪ストーブ。
そんな生活の道具として薪ストーブを運用する最後の一押しが「薪ストーブの土間設置」。一般的にリビングまたはLDKに設置することが多い薪ストーブですが、樹杜屋ストーブは薪ストーブは土間に設置に限るという考えを強く持っています。
趣味の品ではなく、生活の道具として薪ストーブを運用しようとした場合、こまごまとした手間をいかに減らすか、ということを考えるでしょう。土間設置なら薪の搬入動線を最短にし、かまちの上り下りも靴の着脱の手間も省きます。搬入時にこぼれがちな樹皮や木っ端などこまごました塵の処理、薪ストーブ由来で生じるホコリなどの片付けも手早く行うことができます。薪を取り落としても土間ならば傷の心配は少ないでしょう。
また雪国飛騨ならではの便利さは雪で濡れたものを気にせず干せることです。外である程度はたき落としてくるとはいえ、水が滴るのを見ると土間でよかったなとしみじみ思います。凍みる日は除雪用具もストーブ前で乾かします。
土間の欠点と、欠点を補う間取りの事例
土間に薪ストーブを置くことの欠点としては、リビングより玄関でくつろぐ時間が長くなってしまうことです。いなかの玄関はちょっとした来客用の椅子があったりするので、土間でくつろぐことがわりと問題ない家もあるかもしれません。最近の間取りで、玄関-土間-リビングがひと間でシームレスな空間の家も増えているようです。そんな住宅の土間にISLAの納入事例、何件かあります。とても快適そうです。
もう一つ、動線に段差ができてしまうことは欠点です。補助的な調理器具として薪ストーブ上を使いたい場合、床上の台所から一段降りて薪ストーブへ向かうことになります。解決策としては、台所も土間にしてしまうことです。畑-厨房(土間)-ダイニング(土間)が1分もかからず行き来できるような農家レストランのダイニングに納入したALTAは、冬の強烈な暖房器具としてのみならず、煮込み用の熱源としても大活躍だったと聞いています。
もし薪ストーブを実用品として生活に取り入れた自然に近い暮らしを思い描いて家を新築、もしくはリノベーションするのならば、土間に薪ストーブを設置する案の検討をおすすめします。