イラン情勢によるホルムズ海峡の緊張や物流の停滞により、住宅資材が最大70%も値上がりするというニュースが報じられました。これからスーパーインフレの可能性があるという不安なニュースが流れてきます。暮らしを支える住宅建築のありさまが今大きく変わるのを世の中の動きから感じています。
この厳しい経済状況下で、ある興味深い現象が起きています。かつては高価とされていた石場建てや土壁の日本の伝統的な建築が、コストや持続性の面で、現代の一般的な在来工法と肩を並べる、あるいはそれを下回る可能性が出てきたのです。
1. 外部依存の脆さと、手仕事の強さ
現在、住宅建築の主流となっているKD材(人工乾燥材)や集成材、そして多くの輸入材は、その製造・運搬プロセスの多くを石油資源と国際物流に依存しています。世界情勢の悪化は、そのままダイレクトに資材高騰と工期遅延という形で跳ね返ってきます。
一方で、地域の山から木を伐り出し、製材し、手仕事で組み上げる伝統建築は、そのプロセスの多くが「足元の資源」で完結しています。 もちろん、重機を動かす燃料費などの影響は免れませんが、グローバルな価格変動に振り回されるリスクは極めて低いと言えます。


2. 「不便」が「安定」に変わる逆転現象
伝統建築には「工期が長い」「手間がかかる」といった、現代の効率主義から見ればデメリットとされる側面があります。しかし、現在の極端なインフレ下では、この「手間」こそが価格の安定を生むバッファとなっています。
かつては伝統的な「木と土と草(畳)」の住まいを選択した人々が、周囲から「時代に合わない」と言われることもありました。しかし、外部の相場に左右されず、地域にある素材で家を維持できる仕組みは、実は最も回復力や適応力が高い、合理的な選択であったのではないかと思わずにはいられません。
3. 持続可能な「自給」への視点
これは単にどちらの工法が優れているかという議論ではありません。また、混乱を好機と捉えるような話でもありません。
私たちが考えなければならないのは、「住まいの素材をどこまで自分たちの手に取り戻せるか」という視点です。
海峡の封鎖や国際情勢の変化によって、自分の家が建てられなくなる、あるいは直せなくなる。そのような事態に直面したとき、身近にある山の木や土を活用できる技術や仕組みを維持しておくことは、地域社会全体にとっての「静かな備え」になります。
結びに
先のコロナ禍を境にして、在来工法から伝統構法へシフトした大工の友人がいます。伝統構法を「時代に合わない」と言っていた彼です。もしかしたら資材や資源の調達の海外依存度合いの高い建築の方法こそが、令和の今「時代に合わない」建築方法だと考えたからかもしれません。
激動する世界情勢を前に、自分たちが暮らす土地の素材と、それを生かす技術の価値を、中立的な視点で見つめ直す必要があるのではないかと感じています。

